普通の存在に
スクールカウンセラー事業が始まった(平成7年度)頃は、各県に3校(3人)という配置で、スクールカウンセラーになった臨床心理士は、キャリアもあって、周囲から力量を認められた臨床心理士たちでした。いわば、その当時、スクールカウンセラーは「特別な存在」だったと思います。今までは、スクールカウンセラーの配置から10年以上経過し、かなりたくさんの学校にスクールカウンセラーが配置されています。そして、スクールカウンセラーとして働く臨床心理士達も、ほぼ新卒の人など、ごく普通の臨床心理士が勤務しています。つまり、今ではスクールカウンセラーは「ごく普通の存在」になってきました。
私の職業であるスクールカウンセラーについて書きましたが、もっと広く捉えて、臨床心理士について同じことが言えるように思います。臨床心理士は過去には、「特別な存在」だったのかもしれませんが、「ごく普通の存在」にならなければいけないと思います。
治療構造(治療関係)や面接室の中では、利用者の方にとって、臨床心理士は「特別な存在」かもしれません。しかし、機関・施設という職場のなかでは、一人の職員としては、「ごく普通の存在」のはずです。この違いをはっきりと意識することが、臨床心理士が社会的に存在していく際の非常に重要な視点になるのではないかと思います。
「臨床心理士は(心の)専門家だから、職場の人間関係も上手にやらなくてはならない」、とか「臨床心理士は、グループやシステムを扱う能力を持っているはずだから、職場のグループ力動を上手くコントロールしなくてはならない」などという考えは、臨床心理士が万能であるという幻想とつながっているような気がします。職場の一人の職員としては臨床心理士にできることは他の職員とほとんど変わらないと考えても良いと思います。
臨床心理士であっても、一人の人間ですし、職場の人間関係で苦労することもあるし、うつ的になることもあります。それが当たり前のはずです。職業人としての臨床心理士も、他の職種の人たちと同様に、法律や制度で庇護されなくてはならない弱い存在のはずです。
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コメント
裕さんのウェブサイトで書かれていることと共通のようでいて、少し違う響きを今回のエントリーに感じさせていただきました。
ただ、私が思いますに、カウンセラーといえども、まさに一般社会人と同じような意味での「営業能力」「接客能力」「交渉能力」「プレゼン能力」「飲み会を楽しめる能力」などは、弱い存在なりに身につけていくしかないと思います。「うまい」存在である必要はないと思いますが、他の一般社会人と「同じくらい」には評価にさらされている。
もっとも、いちぼんさんがおっしゃるように、昔ほど聖人視されないのは確かに助かりますが。
これらは法律や制度上の保護とは次元が違うことでしょう。殊に日本のカウンセリングの世界は風通しが悪いとも感じますが。
みんな、受容的だから、何が本音がわからない。だから一層の鎧が必要という悪循環といいますか。下手なことは同僚にも相談できないといいますか。この点は他の職種以上という気がします。
こういう点で、他の援助職に比べると、凄く曖昧で閉塞的なままという気も致します(曖昧で未熟で閉じているのは私だけかもしれませんが)。
そして、私の知る限り、3Kで知られる看護士さんや介護福祉士の皆様(私人としてグチられる機会も結構ありました)以上に、カウンセラーのメンタルヘルスの問題が今日まだタブー視されている気がするのは私の偏見でしょうか。
もちろん、そうであってはならないということこそ、いちぼんさんがお訴えになっておられるのだとは拝察いたしますが。
投稿: みつひろ | 2009年4月 8日 (水) 21時49分
みつひろ様
コメントありがとうございます。
「臨床心理士は理念であって…」という表現は、ある程度言いたいことは分かるような気がします。でも、私個人の体験から同じような実感をもてる分けではありません。立場の違いや、体験の違いがあって、若干ニュアンスが違うのかもしれませんね。
みつひろさんが指摘してくださったように、他の人と同様、いつでも、多面的に評価にさらされているというのは、そう思います。しかし、いつでも、必ず、全ての評価の観点で合格点を出せることは現実的ではありません。また、私たちは誰でも、会社組織などからみれば、非常に弱い存在でしょう。労働者・被雇用者は、合格点を必ず取れるわけではないけれども、その場合でも、組織の都合で、自由に取り扱ってはならないと思います。そういう意味で、制度や法律で庇護されるべき弱い存在だというふうに思いました。
説明やお応えになっているのか分かりませんが、お返事とさせてください。
投稿: いちぼん | 2009年4月12日 (日) 00時35分
臨床心理士であっても一人の人間…という考え方には賛成です!!
医者も患者も心理士もクライエントも先生も生徒も一人の人間なのだから悩みもしますし援助が必要です→法的に庇護されるようになるといいですよね!
「カウンセラーのメンタルヘルスはタブー視されているのか」については研究はまだ進んでいないにしても「セラピストフォーカシング」などありますので、タブー視されているかお確かめ下さい。
投稿: ヴァーチャ | 2009年5月10日 (日) 23時07分