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2008年6月20日 (金)

それって、意地悪な気持ちでやってる?

知り合い子どもとちょっと遊んだ時でした。
その子は、私のめがねを取って、なかなか返してくれませんでした。「めがねは大切なものだから、返してください。」と一応きちんと話してみましたが、返してくれませんでした。「こまったなぁ」といってみましたが、相手の子は、むしろ私が困っていることを楽しんでいるようなふうにも思われました。

 そこで、「それって、ちょっと意地悪な気持ちでやってる?」と穏やかに聞いてみました。それでも返してはくれず、余計に、返してくれない雰囲気が強くなってしまったようにも感じました。私は、かなり困ってしまって、その子の隙をついてぱっとめがねを取り返してしまいました。それで、その後は、また余計に何かを取られたりしても困ると思い、その子から少し距離を取って、その場をしのぎました。

 この体験は私には、後味が悪いものでした。そして、その後も、何となくそのことを考え続けていました。否定的な感情を、流さずに、きちんと受け止め、承認していくことが大切だと常々感じていましたし、自分の子どもたちとの関わりでは、そういうことを大切にやってきました。「それって、ちょっと意地悪な気持ちでやってる?」と投げかけた後に、その反応を受けて「きちんと教えてくれる?」と促して、子どもが何を感じて、意地悪な気持ちをぶつけてくるのかを話してもらうこともよくあることでした。その延長線上で、今回も、そういうふうに関わってしまったのでした。

 しかし、今回のエピソードでは、相手の子は、私とはほぼ初対面と言ってもよい子どもでした。だから、「意地悪な気持ちでやってる?」という投げかけは、失礼な投げかけだったと、あとで気づきました。まず「もしかして、僕と仲良く遊ぼうとしてくれてるの?」とか、投げかけてみることが、第一歩だったような気がします。それで、肯定的な反応が出れば、そこから関係が進みますし、否定的な反応が出れば、「えっ、もしかして、ちょっと意地悪??」とか驚きを交えつつ応えてみることもできます。

 私は相手の「意地悪」をとがめるつもりはありませんでしたが、私と初対面だった子にとっては否定的な感情を指摘され、叱られたり、非難されたりするような、気がしたかもしれません。関係がある程度深まってくれば、否定的な感情も、ある程度安心して表現できるようになりますし、否定的な感情こそが重要なテーマになってくるように思います。繰り返しになりますが、今回の場合は、その子に対しては、私の「意地悪な気持ちでやってるの?」という投げかけは、失礼な投げかけでしかなかったと言えます。

 なぜか友達とうまくいかない子どもたちは、こんなすれ違いを、日々の生活の中で繰り返しているのかもしれません。もしかしたら、周りの人の小さな工夫で、もう少しだけうまく関わりが保たれるのかもしれません。

 こうやって今思い出してみると、その子に対して「申し訳なかったなぁ」という気持ちが湧いてきます。それから、一応、(一応ではないか・・・)言葉を道具としている専門職ですから、もっともっと技術を磨きたいとあらためて強く思いました。

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