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2005年8月 2日 (火)

邪魔をしないこと

スクールカウンセリングにおいて基本として最も大切なことは、「邪魔をしないこと」だと私は考えています。

学校は、スクールカウンセラーが配置されるようになる遙かに以前から、子どもたちと先生方が、共に生活し共に学んできた場です。だから、スクールカウンセラーなんかいなくても、それがごくごく当たり前のことだと私は思います。また、スクールカウンセラーが学校で活動しているのは、(ほとんどの場合)週に8時間です。だから、学校が活動している時間の大部分はスクールカウンセラーのいない時間なのです。やっぱり、スクールカウンセラーなんかいなくても、それがごくごく当たり前のことだと、私は思うのです。

子どもにとっても、やっぱりそうだと思います。スクールカウンセラーは、子どもの人生の中で見ると、本当に最も最近になって、登場してきた人でしょう。スクールカウンセラーなんかいなくても、(少なくとも)どうにかこうにか、(もしかしたら)ものすごくうまい具合に生きてきたのです。また、子どもが今生きている時間の中でも、スクールカウンセラーが関わっている時間は、ごくごく限られた時間でしょう。子どものそばに、スクールカウンセラーがいることは、ごく限られた瞬間でしかありません。子どもにとっても、スクールカウンセラーなんかいなくても、それがごくごく当たり前のことだと、私は思うのです。

スクールカウンセラーがいなくても、それなりに、どうにかこうにか、やっとのことで、うまく生きていっているのに、スクールカウンセラーがやってきて、その邪魔をしたり、引っかき回したり、してしまってはまったく最悪でしょう。

もし、専門機関のカウンセリングであれば、子どもの生活や人生の邪魔をしたり、引っかき回したりしてしまっても、最悪でも、その専門機関でのカウンセリングを子ども自身の生活や人生から切り離して捨ててしまうことができます。しかし、スクールカウンセラーは学校で活動しているのです。スクールカウンセラーのいる学校を子どもの人生や生活から切り離してしまうことは、専門機関をそうするよりも遙かに面倒で大変なことです。そして、遙かに子ども自身に負担を強いる結果になります。

だから、スクールカウンセラーは「邪魔をしない」ということが非常に大切だと私は思うのです。そして、その上で、少しでも子どもの役に立つことを目指していかなくてはならないでしょう。

私自身は、駆け出しの頃よりも、「ケガの功名」のようなことが少なくなってきたなぁと感じています。つまり、失敗しそうになったり、失敗してしまったり、でも、結果的にうまくいった、ということが少なくなってきた感じです。まあ、ある程度は、キャリアを積んできたのですから、「ケガの功名」なんてことを期待したり、それでOKだと思っていたりしては、まったくダメなんだと思いますが…。

でも、逆に言うと、難しいことに挑戦しなくなってしまったのかもしれません。子どもの利益を考えるなら、以前よりもっと、難しいことに挑戦しなくてはならない面もたくさんあるはずです。邪魔をしないことと、新しいことに挑戦していくことを両立させていくことが私の課題です。

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コメント

本当にそう思います。
私もスクールカウンセラーの仕事をしておりますが、
先生と生徒の邪魔をしないことが1番大切だと思っています。

このセリフは、なんだかとても消極的な意見にとられがちなので、自分でも自信がなかったのですが、上記の文章を読んで、なんだか少し、俺って間違ってなかったのかも…と、安心しました。どうもありがとうございました。

旅人さん、コメントありがとうございます。
邪魔をしないことが大事だというのはやはり、消極的に取られてしまう心配がありますね。医療では「害するなかれ」ということが基本だと思うのですが、生活の場で関わっているスクールカウンセラーとしては、さらにすすんで、「邪魔をするなかれ」が基本になると思います。

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